スーパー・レジェーラ super leggera

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巨匠の作ったがちがちのモダンデザインの椅子の紹介が続いているので、ここでイタリアンデザインの椅子を紹介したい。
SUPERLEGGERA スーパーレジェーラ チェア icon

建築家のジオ・ポンティーの作品である。
僕が建築家のジオ・ポンティーを知ったのが「ピレッリ・ビル Palazzo Pirelli 」。今でも美しい。印象的なフォルムは、「富士フイルム西麻布ビル」を見れば、芦原 義信大先生もぱっくった!と思ったり。最近では日本航空本社ビルがニュースで流れるとつい思い出してしまう。
調べると、1959年完成しているから随分古い。 また、2002年航空機が衝突し、ひどく破損したが、美しく改修したらしい。サッシなども取り外してメッキし直し、再び取り付ける念の入れ方らしい。
日本の高層ビルでは赤坂プリンスホテルが取り壊されようとしている。1983年完成開業で丹下健三氏の設計。丹下氏が大阪万博以後中東の王国での設計を中心に活動していたが、日本に舞い戻ってきてはじめての作品ではなかったかと思う。一階の紫の絨毯にビアンコ・カラーラという真っ白な大理石は、学生ながらに鮮烈であったし、雁行の客室プランニングも特異で、エロチック(これは僕だけか。)政治家や芸能人のパーティーにも良く使われているから、社会的価値もあるように思うのだが・・
そんな日本とはちがい、1960年、僕が生まれる1年前の高層ビルが、愛され使われるのであるから、日本とイタリアは大違いである。
「ピレッリ・ビル」は構造的にも美しいとされる。構造設計家ピエール・ルイジ・ネルヴィによるだけでなく、この断面図は印象的だ。僕は「建築デザインの原点
」で目にしている。重力と風圧力に抗するため、かつ最小限の材料で実現するため、上は細く下に行くほど太くなっている。姉歯事件では、「上から下目で同一断面で工事費の合理化を図る」なんて馬鹿みたいなことに騙されるアホな建築関係者いたけど、こちらの断面が正解である。しかしこの断面は下が太すぎて、部屋がないのではないか?などと思ってしまう。
しかし、よく見ると、平面の短辺方向の柱部分の断面であり、長辺方向には十分な空間が確保されている。内部からはカーテンウォール越しに外部を見放せる開放的空間が実現されている。この断面図に描かれた柱は、まさに帆船の帆を想像すれば納得がいくのではないだろうか。非常に合理的で美しい構造計画に見えてくる。

ところで、「SUPERLEGGERA スーパーレジェーラ チェア icon 」とは「超軽量椅子」とよく訳されている。イタリア語を改めてgoogle翻訳で調べると「leggera」は「光」。うっチョイ違うぞ!と思い「legger」を調べると「少し」。光子のように微小のさらに上?って意味か。ついでにサイトを検索するとスーパーカー・ランボルギーニsuper leggeraが出てくる。「超軽量」に加え「光」「速度」のイメージに、なんとなく納得である。

脱線に脱線を重ねたが、この椅子トネリコという木を用い、とにかく軽量にすることがコンセプトである。子供が指一本で持っている写真も見かける。
とはいえ、このプロポーション・デザインがなんとも美しい。モダンデザインのインテリアから、伝統的なデザインのインテリアのどこにおいてもマッチしてします。細すぎて存在が薄いように見えて、その椅子はオーラを払っている。
この椅子のどこが美しいのか?見れば見るほど、分析すればするほど普通である。4本足に背には2本の背もたれ材、足にも中間の補強材が渡されている。普通の食卓の椅子なのである。これまでに紹介したミース・コルビジェ・ヤコブセン、他にもライト・マッキントシュ・リートフェルト・ヤマサキ・・・オリジナリティーの匂いがプンプンするデザイナー家具と比べると一目両全である。
この椅子を最初に知ったのがまたしてもインテリアウォッチング。これには次のように紹介されています。
「たとえば木の椅子ひとつとっても、スカンジナビアの・・・一連の椅子は、・・・材料の使い方が全く合理的で、いわば優等生風であるのに比べて、ジオ・ポンティーのスーパー・レジェーラ(超軽量椅子)の方は曲芸であり、それだけに危険な魔力を秘められていると言えよう。
 そういえば我が国の工業試験所で先のポンティーの椅子の強度試験と分析調査した結果では、予想外に丈夫で、ポンティーのデザインも見かけほど無茶なものでなく、ただ接合部の接着剤が旧式で実力が十分発揮されてないとの結果のようであった。どこか幼稚な欠点があるのもイタリアらしいし、また最先端の接着技術を有しながらも、先のような椅子がつくれない日本の状況も反対に興味深いのである。」
そう、日本とイタリアのちがい、今も変わらないかも。そして、この軽量化は接着材に頼っている部分があるのも興味深いですね。それと、普通のようで曲芸的という、魔力。これがこの椅子の本領なのでしょう。

そうして、この椅子をあらためてよーく見ると、正面から縦部材(足と背)を見た場合、スレンダーに細く見え、横から見ると若干太く、あれっ、案外太いという印象である。つまり縦部材の断面は扁平になっている。横部材も同じく扁平になっており、ラーメン構造の梁の感じである。
おやっ、なんだか、「ピレッリ・ビル」の構造と似てませんか。扁平な柱を使って、かつ力学的にも最小限の断面とし、軽やかに見せる。普通のようで極限まで研ぎ澄まされたデザインの魔力。
これが、「SUPERLEGGERA スーパーレジェーラ チェア icon 」なんじゃないかな。大好きな椅子です。
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\\\ 蛇足 \\\
お値段?やっぱり高い!!
で、リプロダクト製品を探しても出てこない。出てくるのはスーパーカー・ランボルギーニsuper leggeraのミニカーばかり。
高度な技術なしには再現できない椅子なんでしょうね。まさに魔力ですね。
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LC4 CHAISE LONGUE

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LC4 CHAISE LONGUE icon カッシーナ社製 (黒皮)

エロスを感じる、最もコルビジェらしい椅子だと思う。
iconこの曲線に、スチールと皮の対比、グラマラスな女性が寝そべるのを想像してしまう寝椅子。いかにもヘルムートニュートンの写真に似合いそうではないか。

前に、コルビジェの椅子がル・コルビュジエ全作品集〈第1巻〉 (1979年)に出てくるのは、Ville d'Avray1928/29と書いたが、よく見るとその45ぺージほど前の1927年に「家具および住宅の装備」としていページで、LC1とこのLC4 CHAISE LONGUE iconが紹介されている。中でもLC4 CHAISE LONGUE iconが中心的存在として掲載されているから、コルビジェのお気に入りだったのではなかろうか。

大きく掲載された写真にはLC4 CHAISE LONGUE iconの骨組みだけが映し出されている。構造的には単純で、スチールの台に、寝椅子の座面を支えるアールのついたパイプが置かれているだけである。つまり、スチールの台の上のアールのパイプを移動することで寝椅子座面の全体の角度を調整するかたちだ。座面のシートを支えるためにスチールのパイプに数多くのスプリングを取り付け、それに皮バンドを亀甲上に取り付けている。機能的ディティールである、いっぽう、亀甲上のバンドはバタイユのエロスそのものではなかろうか。つまりSMチック!
スケッチも掲載されていて、「さまざまな座り方の研究」とあるが、人物はスカートをはいた女性だ。コルビジェ先生!明らかに女性が寝椅子に横たわる姿を想像させていたのではないのかなー。

ところで、この寝椅子の実用性を考えると、??。角度の調整も全体の角度の調整だけだし、全体のカーブも変える事ができない。つまり同じ体勢で横たわっているしかない。しかも結構大きいと来た。

うーん、そんなセコイことは言いますまい。
この椅子を置くだけで、部屋には、クールなエロスが充満するわけですから。
座る装置ではなく、エロスのオブジェなのだ!!

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LC4 CHAISE LONGUE icon カッシーナ社製(毛皮)¥630,000円
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